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人間の気を奪ふため、故(ことさ)らに引込(ひきこ)まれ/?、やがて忽(たちま)ち其(その)最後の片翼(かたつばさ)も、城の石垣につツと消えると、いままで呼吸(いき)を詰めた、群集(ぐんじゅ)が、阿(あ)も応(おう)も一斉(いっとき)に、わツと鳴つて声を揚げた。此の人声(ひとごえ)に驚いて、番所の棒が揃(そろ)つて飛出(とびだ)す、麻上下(あさがみしも)が群れ騒ぐ、大玄関(おおげんかん)まで騒動の波が響いた。 驚破(すわ)、そのまぎれに、見物の群集(ぐんじゅ)の中から、頃合(ころあい)なものを引攫(ひきさら)つて、空からストンと、怪我(けが)をせぬやうに落(おと)いた。が、丁度(ちょうど)西の丸の太鼓櫓(たいこやぐら)の下の空地だ、真昼間(まっぴるま)。」 「妙(みょう)。」 と、山伏がハタと手を搏(う)つて、 「御坊(ごぼう)が落した、試みのものは何ぢや。」 「屑屋(くずや)だ。」 「はて、屑屋とな。」 「紙屑買(かみくずかい)――即(すなわ)ち此だ。」 と件(くだん)の大笊(おおざる)を円袖(まるそで)に掻寄(かきよ)せ、湖の水の星あかりに口を向けて、松虫(まつむし)なんぞを擽(くすぐ)るやうに笊(ざる)の底を、ぐわさ/?と爪で掻くと、手足を縮めて掻(かい)すくまつた、垢(あか)だらけの汚(きたな)い屑屋が、ころりと出た。が、出ると大きく成つて、ふやけたやうに伸びて、ぷるツと肩を振つて、継ぎはぎの千草(ちぐさ)の股引(ももひき)を割膝(わりひざ)で、こくめいに、枯蘆(かれあし)の裡(なか)にかしこまる。
